不動産投資をするなら知っておきたい!【危険負担】とは?

不動産投資と危険負担

地震や台風など、自然災害の脅威と隣り合わせにある日本において、天災地変による物件の滅失や毀損の対策をとることは必須です。

決して他人ごとではないからこそ、対策を講じなければなりません。

しかし、実際に不動産取引においてどのような対策を取ればよいのかわからない人も多いと思います。

そこで今回は、不動産取引における「危険負担」に着目し、「法的責任のない理由で目的物件が引き渡し直前に滅失したらどうなるか?」について、詳しくみていきます。

 

不動産取引における危険負担とは?

不動産取引における危険負担とは、不動産の売買契約を締結した後引き渡しの前までの間、自然災害など売主と買主どちらにも法的な責任のない理由で、取り引き対象にある物件が無くなったり傷ついたりした場合を想定しています。

物件の修復が可能な場合は、売主が修復して買主に引き渡しをし、物件が無くなってしまった場合は、買主は売買代金の支払いに対してNOと言える、というものです。

とりわけ、不動産契約での危険負担は買主の立場が保護される傾向にあります。

そのため、危険負担については売主(債務者)が責任を負う、「債務者主義」が一般的です。

 

民法改正による危険負担の変更点とは?

危険負担に関しては、令和241日施行の民法改正で大きな変更がなされました。

では、危険負担の改正は、どのような背景でなされたのでしょうか?変更点とあわせてみていきましょう。

 

今までの民法の問題点

これまでの民法における危険負担の考え方は、現実社会と解離している考え方でした。

とくに、特定物売買における債権者負担は、大きな不合理があると言わざるを得ません。

たとえば不動産の売買において、すでに契約が成立していれば、債権者に責任のない理由で不動産の引き渡しができなくなった場合でも、結果的に買主が代金を支払わなければならないからです。

改正前の民法の考え方は、「契約の成立とその実現とは別」というスタンスにもとづくものでありますが、現実的に買主の立場になると、自分の責任ではないのに代金を払う必要性があるのは納得できないことでしょう。

もしも、不動産の引き渡しができない理由を作ったのが第三者ならば、その第三者に対する損害賠償の請求は可能です。

たとえば、放火による物件の滅失は、犯人が特定できている場合はその放火犯に対して責任を追及できます。

しかし、犯人がわからない場合、お金を請求できる相手がいないので、物件の購入費は支払ったけど物件自体は手に入らない、といった事態になり得ます。

このような、買い手にとっての不条理を解消するために、今回の民法では大きく次の2点が改正されました。

 

今までの民法からの変更点①

1つ目の変更点は、「債務者の責任がなく債務の実行ができない場合、債権者は契約を解除できる」という点です。

たとえば、不動産の売買契約が成立した後、物件の引き渡し前に大きな地震があって物件が滅失し、引き渡しができなくなったケースでは、買主は売主との売買契約を解除できるようになりました。

売買契約の解除がなされると、契約の当事者は契約前の状態に物件を戻す、「原状回復義務」と呼ばれる義務が生じます。

ゆえに、契約時に買主から頭金が支払われているならば、直ちにその頭金を物件の買主に返還しなければなりません。

 

今までの民法からの民法の変更点②

2つ目の改正点は、「契約当事者の責任以外で債務を実行できない状況に陥った場合、債権者は反対給付の実行を拒否できる」という点です。

つまり、物件の売買契約が成立したあとに、家の引き渡し前に買主も売主も落ち度のない問題によって物件の引き渡しができなくなった場合、売主から代金の支払いの請求を受けた場合はこれを拒否できるというものです。

 

危険負担の変更ポイント3

危険負担における、民法の変更点が理解できたところで、次からは変更点にどのようなポイントがあるのかについて、みていきます。

 

ポイント①

1つ目の変更ポイントは「契約書の文書」です。

先述したとおり、改正前の民法では物件の売買契約が一度成立してしまえば、第三者によって放火されても買主の代金を支払う義務や、売主が代金を請求する権利をナシにはできませんでした。

しかし、このような実際の契約社会とはあまりにもかけ離れたルールは不条理なので、多くの不動産取引においては契約書に特例を設けて、対応してきました。

特例とは、たとえば「売買契約の成立後に契約者の責任にないなんらかの理由で債務を履行できなくなった場合は契約解除ができる」というもの。

特例をわざわざ設けなければならないルールは、あまり意味がありません。

したがって、新しく施行される民法では危険負担の該当箇所の変更をしたのです。

 

ポイント②

2つ目のポイントは「反対債務の取り扱い」です。

民法改正前の危険負担の考え方は、契約当事者同士の責任ではない理由で債務を履行できなかった場合は、債務者は反対給付を受ける権利がありませんでした。

しかし、今回の民法改正では、債権者が反対給付の拒否をできるようになりました。

反対給付とは、たとえば売主にとっては代金、買主にとっては売買の目的物が反対給付となります。

従来の考え方では売買契約の成立後、台風や地震で家が無くなってしまった場合、契約を解除するまでは家の売主から買主に代金の請求ができます。

台風や地震で家が無くなったとしても、買主と売主の契約は続いているので、売主にとっては当然の権利です。

ただし、第三者が原因で物件の引き渡しができない場合、契約は解除できるので、契約解除する間にも物件の代金を売主が求められるのは、矛盾しています。

そこで、新しい民法では、もしも売主が代金を請求してきても買主はそれを拒否できるとしました。

つまり、第三者が原因で債務の実行がない場合は、危険負担という考え方がなくなるのです。

どちらにしても、契約は解除できるし、解除前に物件の代金を請求できるとした点が、実生活の感覚に沿った規定であるといえるでしょう。

 

ポイント③

3つ目のポイントは「契約解除の理由」です。

自然災害や第三者による放火などによって物件の引き渡しができないようなケースは、買主にも売主にも責任の追及ができない問題です。

しかし、たとえば最近河川の氾濫が頻繁に生じる地域だったのに、売主がそれを買主に告知しなかったり、災害のリスクに何も対応しなかったりした場合、売主にまったく問題がなかったとはいえません。

買主のなかには、管理不十分だとして責任を追及する人が出てくる可能性もあります。

今回の改正で、契約を解除できる、債権者は反対給付を拒否できるなど、不動産取引において、従来とは違うプロセスが実行されることになります。

 

危険負担が移行する時期

ここまでで、危険負担とはなんなのか、ルールの概要と民法の改正のポイントについて理解できたかと思います。

そこでここからは、危険負担が移行する時期についてみていきましょう。

 

移行時期が有利な時期は売主と買主で違う

危険負担において売主が責任を負担する場合、買主には物件の代金を支払う義務がなくなる一方で、買主が責任を負う場合は支払い義務が残ります。

したがって売主にとっては、責任が早く買主に移転した方が危険負担を負う必要性がなくなるので有利です。

反面、買主にとっては可能な限り危険負担の責任が売主にあり、物件が滅失してしまった場合は、支払いをしない方が有利といえます。

このように、責任がいつ移転するかという危険負担の問題は、買主と売主にとって非常に重要なのです。

 

実務における危険負担の扱い

移転時期は民法上に規定がありますが、これは強行規定ではないので、物件の売主と買主の合意をもって、異なる別の定めとすることもできます。

たとえば、物件の売買契約を取り交わす際に「目的物の危険負担は、引き渡しが完了したときに売主から買主に移転する」「目的物の危険負担は、物件の検査が完了した際に売主から買主へと移転する」という特約を盛り込んで、危険負担の時期を設定できるのです。

先述した通り、危険負担の移転時期は売主にとっては早ければ早いほど都合が良く、買主にとっては遅ければ遅いほど都合がよいことになります。

したがって、物件の所有権の移転時期と同様に、売主と買主が十分に話し合いを進めて、お互いが納得する形で契約を進めることが重要です。

 

危険負担のリスクに関してできるサポート

不動産取引における危険負担のリスクは、売主が負う傾向にあります。

したがって、売主は危険負担のリスクに対して対策を練ることが重要です。

では、危険負担のリスクに関してできるサポートは、どのようなことがあるのでしょうか。

 

手付金の還付への備えを促す

売主と買主の責任以外で物件が滅失したり、毀損があったりした場合、売主は手付金の変換をする必要がある可能性がでてきます。

しかし、売主によっては自分から契約を解除する可能性はないからという理由で、物件の引き渡し前に手付金を使ってしまう場合や、買い換え先の手付金に充ててしまう場合があります。

本来、売主が受領した手付金は、決算日まで保管しておくべきものですが、先述したようなリスクへの配慮がないと、いざというときに金銭的な負担を負いかねません。

したがって、決済が完了するまでは、危険負担のような手付金を買主に戻さなければならない可能性がある点をよく理解し、万が一のことに備える意識をもつことが必要です。

 

危険負担への意識づけをする

自然災害や事件に巻き込まれることによる危険負担の発生は、いつでも誰にでも起こりうることです。

しかし、実際には「自分は大丈夫だろう」「そんなに多く生じることではないから」と、自分ごととして捉えられている人はそう多くありません。

日本は未曾有の地震を何度も経験し、何十年に一度の台風や大雨などの自然災害のリスクは、毎年のようにあります。

したがって、そのような予期せぬ事態によって、不動産取引になんらかの問題が起こりうることは、自分にもあり得ることだと認識することが大切です。

危険負担の負担を負うのは売主ですから、その点リスクへの意識を常にもつことが後々にあり得るトラブルを防止する際に重要です。

 

自然災害のリスクを回避するためには?

自然災害のリスクを回避するために、投資家ができることはあるのでしょうか?

いくつかの対策方法をご紹介します。

 

投資する地域の事前調査を徹底する

投資物件としての地震被害を最小限に抑えるためには、投資対象の立地への配慮が重要です。

たとえば、マンションは鉄筋コンクリート造が多く、構造的に地震に強いといわれていますが、物件の地盤自体が軟弱だと、いくら物件構造が強靭な造りでも崩壊するリスクはあります。

したがって、投資物件の選定をする際には、対象不動産の立地の地盤が強いかどうかの確認をしましょう。

インターネットの中には「揺れやすい地盤」として、住所を入力すると、地盤の揺れやすさや地形の種類を表示してくれるサイトがあります。

また、地盤が悪い地域であっても、耐震設計のしっかりしている物件であるか、適正な杭を地盤に打っている地震リスクへの対処がなされている物件かなどをチェックするとよいでしょう。

不動産の購入資金に余力のある人は、分散投資をすることでリスクを分散するという手もあります。

つまり、地震のリスクに備えて、異なるエリアのマンションへ複数投資するという方法です。

その際は、自然リスクばかりを配慮するのではなく、空室リスクについてもあわせて考慮すると、地震リスクは少ないけれど不人気のエリアで収支の赤字が続くような事態を避けられます。

 

地震保険に加入する

不動産投資において、保険への加入はもはや常識です。

最もスタンダードなのは、火災保険

そして、その火災保険と一緒に加入できるのが、地震保険です。

その際は、地震保険単体ではなく、必ず火災保険とセットで加入する必要がある点に留意しましょう。

先述した通り、マンションへの投資の場合は地震リスクは低めになりますが、心配な投資者は地震保険にもあわせて加入すると安心です。

 

不動産投資と危険負担まとめ

今回は、不動産取引における危険負担について、解説してきました。

要点は次のとおりです。

・危険負担は物件の買主も売主も法的に責任がないという前提で成立する

・物件の毀損が修復可能である場合、売主の責任で修復して物件に引き渡しをする

・物件が滅失してしまった場合、買主は物件の売買代金を拒絶できる

自然災害のリスクが高い日本において、危険負担は決して人ごとではありません。

何があっても対処できるように、いざというときの対策や知識も得ておくと良いでしょう。

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