不動産投資における法人スキームが問題視される本当の理由とは

不動産投資での法人スキームはリスキー

不動産投資において、「法人スキーム」と呼ばれるスキームが流行していた時期があります。

この流行には、2015年頃から多数の不動産投資家が法人スキームを利用して、不動産の規模を拡大させていたという背景があります。

しかしながら、法人スキームは非常にリスクが高く、最悪の場合は自己破産などの事態も招きかねない、非常に危険なスキームなのです。

今回は、そんな法人スキームの内容と、なぜ絶対にやってはいけないのかという理由を説明していきます。

 

「法人スキーム」とは?

法人スキームとは、不動産を購入する度に法人を新たに設立し、法人ごとに別の金融機関から融資を受ける行為のこと。

法人スキームは個人事業主では利用できず、法人を設立しなければいけません。

連帯保証人が代表者となり、代表者の信用力のもと、金融機関は法人に対して融資をします。

そのため、代表者が”公務員”や”サラリーマン”など、融資を受けやすい属性の場合に利用するケースが多いです。

法人スキームには「他法人スキーム」「1法人1物件スキーム」「法人隠しスキーム」など、様々な呼び方がありますが、内容はすべて同じです。

 

法人スキームの流れ

法人スキームの流れは、下記の通りです。

1.法人で金融機関から融資を受けて、物件を購入する
2.新たに法人を設立する
3.新設法人で別の金融機関から融資を受けて、物件を購入

 

法人で金融機関から融資を受けて、物件を購入する

まずは、不動産投資をするために新たな法人を設立します。

法人スキームで設立する法人は株式会社ではなく、登記費用が安い合同会社で登記をするケースがほとんど。

その後、連帯保証人を代表者にして金融機関から融資を受け、不動産を購入します。

 

新たに法人を設立する

不動産を購入した後に、新たに法人を設立します。

既存の法人では融資を受けることができないため、新設法人で融資を受けることが目的です。

 

新設法人で別の金融機関から融資を受けて物件を購入

新たに設立した法人で、別の金融機関からの融資を受け、物件を購入します。

1棟目と同じように連帯保証人を代表者にして物件を購入したあとは、また新たな法人を設立して、物件を買い進めていくという流れになります。

法人スキームの具体例

•代表者Aの法人AがA銀行から融資をうけて、Aというアパートを購入
•代表者Aの法人BがB信用金庫から融資をうけて、Bというアパートを購入
•代表者Aの法人CがC信用組合から融資をうけて、Cというマンションを購入

代表者Aは、実質的には3つの物件を購入しているにも関わらず、それぞれの金融機関には1つの物件を購入しているように見えます。

金融機関側は、代表者Aが他の法人を所有していることを知らないため、融資を行ってしまうのです。

これが、法人スキームと呼ばれるスキームのカラクリ。

しかし最近では”金融機関を欺く仕組み”として、この法人スキームが問題視されています。

 

法人スキームの特徴

法人スキームの主な特徴は、下記の3つです。

 

•短期間で不動産の規模を拡大できる
•融資枠の拡大が可能
•リスクが大きい

 

法人スキームは短期間で規模の拡大が可能

法人スキームを利用すると、短期間で複数の物件を買い進めることができます。

通常であれば、1棟目の物件購入後、法人の決算が出るまで、金融機関から融資を受けられません。

もし1棟目の不動産投資が上手くいっていなかった場合、融資を回収できなくなる恐れがあるからです。

そのため、個人の不動産投資家は、1年以内で保有している不動産の規模を急激に拡大することはほぼ不可能だと言えるでしょう。

しかし、法人スキームの場合、別の金融機関を利用すれば白紙の状態で審査を受けられるため、融資に通過しやすく、短期間で投資規模を拡大することが理論上可能になります。

 

融資枠の拡大が可能

法人スキームを利用すると、「法人は個人よりも融資枠が大きくなりやすい」「連帯保証の情報は金融機関内で共有されない」ことから、融資枠を拡大することが出来ます。

特に注目すべきは、「連帯保証の情報は金融機関内で共有されない」という点です。

個人が金融機関から借入している場合、金融機関は信用情報機関を通じて負債の情報を共有します。

例えば、借入する予定の個人Aが、B銀行から1,000万円の融資を受けていたとしましょう。

Aが、不動産の規模拡大のためにC銀行から融資を受けようとしても、C銀行は信用情報機関を通じて、AがB銀行から1,000万円の借入をしていることが分かるのです。

そのため、融資に対してマイナス評価が働き、融資審査に通過したとしても融資枠は小さくなります。

一方、法人スキームの場合、連帯保証人の情報は共有されないため、実際の負債がわからない状態でも融資を受けられます。

代表者AがD合同会社を設立し、Aを連帯保証人としてB銀行から1,000万円の融資を受けていたとしましょう。

代表者AがE合同会社を設立して、Aを連帯保証人としてC銀行から融資審査を受ける場合、連帯保証人の情報は金融機関内で共有されないため、Aの負債はゼロとされて、融資を受けることが可能です。

そのため、融資に対してマイナス評価が働かず、融資枠の拡大ができるという仕組みになります。

 

法人スキームはリスクが大きい

「短期間で規模を拡大できる」「実際以上の融資枠の拡大が可能」な法人スキームですが、同時に高いリスクを背負うことになります。

法人スキームを行いながら粗悪な物件を買い進めていた場合、保有している数が多い分、赤字の額も大きくなるのです。

他の事業や給与の範囲内で赤字をフォローすることが難しくなった結果、キャッシュフローに余裕がなくなり、経営が破たんしたというケースも少なくありません。

 

法人スキームをやってはいけない2つの理由

法人スキームをやってはいけない主な理由は、下記の2点です。

 

•メリットの割にデメリットが大きい
•一括返済や高額な金利を請求されるリスクがある

 

メリットの割にデメリットが大きい

法人で不動産投資をするメリットとして挙げられるのが、不動産の住宅部分に課税される消費税が還付される「消費税還付」が受けられたことです。

これまでは、法人スキームを利用して、物件の規模を拡大させればさせた分だけ、住宅の消費税分の現金が戻ってきたので、消費税還付の恩恵を大いに受けることができたのです。

しかし、税制改正により2020年10月1日以降は消費税還付が受けられなくなるので、法人スキームを利用して受けられるメリットはかなり小さくなると言えるでしょう。

後述する一括返済や高額な金利請求のリスク、不動産運営失敗時のダメージの大きさなど、法人スキームの利用にはデメリットがたくさん。不動産投資の規模を拡大させたいのであれば、正攻法で一棟ずつ増やしていくべきです。

 

一括返済や高額な金利を請求されるリスクがある

法人スキームは、金融機関との契約違反となります。

融資を受ける際、金融機関は借主との間で金銭貸借契約書を結びますが、その中に「借主が金融機関に虚偽の申告をした場合や不正をした場合、金融機関は借主に対して一括返済や金利をあげることができる」という条文があります。

法人スキームは総債務の虚偽の申告にあたるため、金融機関から「一括返済」や「高額な金利を請求される」などの危険性があり、最悪の場合、詐欺罪として刑事事件に発展する可能性も。

特に、近年では金融機関の間で合併が加速しており、法人スキームがバレる可能性が高くなっています。

 

金融機関が合併すると、融資情報が金融機関内で共有される

参議院の資料である「地方銀行の現状と課題」によると、平成8年3月31日時点では第二地方銀行が65、信用金庫が410、信用組合が364でした。

しかし、相次ぐ合併のため、平成30年6月1日時点では第二地方銀行が40、信用金庫が261、信用組合は148に激減。

合わせて350以上もの金融機関が、ここ20年の間で大幅に減少していることになります。

低金利政策が続いているため、今後も金融機関の収益は厳しくなると言われており、合併の流れは今まで以上に加速するでしょう。

融資を受けている金融機関同士が合併した場合、融資情報は当然、金融機関内で共有されます。

法人スキームによる不正の対応をせまられ、一括返済や高額な金利が請求される可能性も0ではありません。

クリーンな不動産投資を行うのであれば、法人スキームはNG行為だと言えるでしょう。

 

りそな銀行が法人スキーム対策を実施

「メガ大家」や「ギガ大家」と呼ばれ、不動産を数多く保有している不動産投資家は、この法人スキームを利用して投資規模を拡大させたと言われています。

しかしながら、実際にはあらゆる銀行がこのスキームを問題視していました。

実際に、国内最大級の不動産投資ポータルサイト「楽待」では、”りそな銀行が法人スキームに対して対策をした”という記事があります。

簡単に説明すると、法人スキームをりそな銀行が不正とみなし、「金利を6%にするか、一括返済をするか」を不動産投資家に求めたできごとです。

法人スキームを利用して利回り6~7%で運営していたため、金利が6%になれば投資は当然赤字になります。

結局、不動産投資家は土地を売却し、2,000万円の損失が出たということです。

 

「一括返済」「金利の上昇」を求めるりそな銀行

りそな銀行のように法人スキームを問題視し、対応を求める金融機関が今後も出てくることが予想されます。

もし法人スキームが金融機関に知られると、不動産経営に大きな影響を与えるだけではなく、最悪の場合、自己破産にもなりかねません。

今後の人生にも悪影響を及ぼしかねないので、法人スキームは利用せず、一法人でクリーンな不動産投資を進めていきましょう。

 

不動産投資のグレーゾーン・法人スキームまとめ

今回は法人スキームの内容と、近年問題視されている理由について解説してきました。

法人スキームに関するポイントは、下記の3つです。

•法人スキームは、物件ごとに金融機関から融資をうける不正なスキーム
•銀行を欺く行為のため、融資の一括返済や高額な金利請求のリスクがある
•すでに利用しているのであれば、不動産会社や信頼できる友人に相談

法人スキームは、不動産会社や不動産コンサルタントにすすめられることもありますが、メリット以上にデメリットが多く、非常に危険なスキームです。

不動産投資におけるリスクを最小限に留めたいのであれば、法人スキームに頼らずコツコツと投資を続けてきましょう。